【VUCA】VUCA時代における戦略とリーダーシップ

企業や個人を取り巻く市場環境は複雑で不確実になり、今後もこの流れは加速していきます。世界の経済人が集まるダボス会議ではこのような状況を指して、「VUCA時代」という言葉が聞かれるようになりました。

VUCA時代の始まり

 

Volatility(変動)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑)
Ambiguity(曖昧)

VUCAとは頭文字を取った造語であり、将来の予測がほぼ不可能になったということを表しています。

VUCA時代では大きく2つの大きな変化があると考えられています。

  1. AIを中心としたオートメーション化の加速
  2. 事業環境の不確実性の増大

ではこのような時代において、企業はどのような戦略やリーダーシップ、能力が求めらていくのでしょうか。

オートメーション化への適合

AIを中心としたオートメーション化の加速によって企業間の競争環境が劇的に変化、収益性に明確な優劣がつきます。
特にAIの得意な領域を理解し、きちんと適合していかなくては、業界から淘汰される可能性があります。

AIの得意な領域は、

  1. PDCAサイクルを回しデータを照らし合わせて学習していくような領域
  2. フローやプロセスが決まっている中でのデータ処理や正確性を求める領域

このような作業がAIに置き換わることで「人件費削減」、「採用・育成リスク低減」、「ヒューマンエラーによる生産性のバラつき防止」を可能にすることができ、同時に生産性が向上する為、急速に収益性が向上します。

この流れに適合するために必要なことは、

  1. ITリテラシーの向上
  2. 業務の明確化
  3. コアコンピタンスの再発見

特に業務の明確化は、下記マトリクスを活用すればオートメーション化する業務だけでなく、捨てる業務外製化する業務も明確になっていきます。

シンプル・ルールによる戦略

将来が予測できない環境下において重要なことは、試行錯誤して環境変化に絶えず適応していくことです。
これまでの持続的な競争優位性の構築はできなくなるため、一時的な競争優位性を連続して構築することが求められます。

アイゼンハートが提唱している「シンプル・ルール戦略(シュンペーター型の競争とも言う)」がこのような状況の中でも競争優位性の構築に適します。
シンプル・ルールとは「数少ないのシンプルなルールだけを組織に徹底させ、状況に合わせて柔軟に意思決定することでダイナミックケイパビリティを発揮させる」というものです。

ちなみにダイナミックケイパビリティとはRBVとルーティンという2つの理論基盤から成立しています。

RBVは「企業の持つリソースの組み合わせがビジネスの成果に繋がる」という理論。
ルーティンとは「企業に慣習として埋め込まれた、繰り返しの行動プロセス」という理論。

すなわちダイナミックケイパビリティとは「変化する事業環境の中で社内外のリソースを絶えず組み合わせ、直し続ける、企業に埋め込まれた慣習や繰り返しの行動プロセス」と言えます。

実は経営学者の間でもコンセンサスは取れておらず、まだ経営理論として確立していません。
しかし、シンプルなルールを作るための方法としては

1 「自分の経験」をとことん活用する
2 「他者の経験」をうまく拝借する
3 「科学的証拠」で巧みに補強する
4 「話し合い」でレベルを上げる

であると言っており、それにより作り上げられたルールは、組織の生産性を高めていきます。

現場レベルの意思決定と実行体制

VUCA時代は予測が困難の為、企業のトップが正しい判断を行えるとは限りません。
また現場サイドのほうが顧客との接点を持っている為、市場や競合の変化を肌で感じ、スピーディーに最適な意思決定ができる場面が増えてきました。
そこでシンプル・ルールで述べた通り、VUCA時代に求められるのは、現場レベルでの柔軟な意思決定とそれを実行する体制がカギになってきます。

そこで下記のリーダーシップスタイルでは状況に合わせてトップダウンによるリーダーシップではなく、権限移譲とエンパワーメントによるボトムアップ型のリーダーシップを可能としていきます。

リーダーシップのタイプは条件適合理論に基づくと、4つのリーダーシップスタイルが存在し、リーダーシップの型の使い分けは、仕事の難易度や部下の能力によって変わってきます。

指示・命令型【教示型】:作業内容を具体的に命令するリーダーシップスタイル
参加・指導型【コーチ型】:指示しながらも一緒に考え、部下の考えを尊重するリーダーシップスタイル
支援・説得型【支援型】:進め方は任せ、必要な時にサポートを行うリーダーシップスタイル
委任・達成型【委任型】:具体的なタスク、進め方への指示は無く、責任だけ負うリーダーシップスタイル

このようなボトムアップの組織構造は多元型(グリーン)組織と呼ばれ、権限を移譲することによって、部下のモチベーションを高めます。
また、現場レベルでの意思決定を可能にし、環境変化に対応することができる組織構造となっていきます。

しかしながら近年、新たな「ティール組織」と呼ばれる組織構造も提唱されております。
ティール組織は階層という概念が無く、上司がマイクロマネジメントしなくても目的のた為、進化を続ける組織のことであります。

ティール組織は目的に向かってメンバー全員の自分らしさを最大限に発揮させ権限をもって自らが意思決定していきます。
その為、そもそも権限移譲が必要とせず、環境に応じて柔軟に対応していきます。
一つの生命体のように組織が動いていきます。
こういった新しい形態の組織が、VUCA時代に適用した組織構造ではないでしょうか。

また京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が編み出した「アメーバ経営」は実践的な権限移譲の組織構造となっております。

アメーバ経営とは「経営は経営トップのみが行うのではなく、全社員がかかわって行うべき」という考えのもと実施されており、採算部門の組織を5から10人という少数チーム(アメーバ)で細分化し、それぞれが独立採算で運営される組織を運営する経営です。
非常に小規模かつ独立採算(役割・責任の明確化)のアメーバが独立して活動することで、タイムリーにマーケットの変化に対応できる強みを持ちます。

経験を知に転換する組織学習

ここまで「戦略」「リーダーシップ」に関して述べてきましたが、最後に「組織学習」の観点からみていきます。
シンプル・ルール戦略で柔軟に意思決定する際に重要なのが、「いかに高速で試行錯誤を繰り返し、正解っぽいものを導き出すか」です。その際、どれだけ組織として経験から学習し、次の行動に活かしていくかが成否を分けていきます。
カーネギーメロン大学のアルゴーディ教授によると、
組織学習は下記の循環プロセスを取ります。

  1. 組織・人の知に基づいた行動
  2. 行動による経験
  3. 経験による知の獲得

この循環プロセスの中で、特に経験から知を生み出し組織に溶け込ませていくプロセスを説明するために、SECIモデルを紹介します。

SECIモデルとは一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の野中郁次郎教授が提唱した組織のナレッジ・マネジメントの仕組みです。
SECIモデルは下記の図のような流れで知識を創造すると述べています。

共同化

共同化とは個人の持つ暗黙知を、共同で作業をしていく中で他人に伝え、共同の暗黙知として伝えることです。
良く上げられる例は、職人さんの修行において親方と弟子が一緒に作業をすることで、親方の仕事を見て真似ます。

表出化

表出化はこの共有した暗黙知を組織内の対話や思索を通じて言語化、図式化として形式知に変換することです。
「マニュアルに落とし込む」や「teamsを活用し情報の共有や外部サービスとの連携」などがこれに該当します。

連結化

連結化は表出化で言語化、図式化した形式知同士を組み合わせたり、編集したりすることで知識を体系化し新しい形式知を生み出すことです。
例えば、作成したマニュアルを他の部署の観点を追加し、ブラッシュアップしていくことが該当します。

内面化

内面化とは連結化された形式知を個人ノウハウとして体得し暗黙知化していくことです。個人へ内面化されることにより、個人も組織も成長していきます。

このように、①共同化、②表出化、③連結化、④内面化の4つのプロセスを辿ることでナレッジと経験が蓄積され、次の試行錯誤、フローへと繋がっていきます。

まとめ

VUCAに支配され、従業員の負荷が大きい環境では、イノベーションに向けて部下の集中力を取り戻すことはマネジャーの責務であると感じています。

組織の基盤を守りつつ、イノベーションを起こせる組織づくりが求めらるため、VUCA時代の「戦略」と「リーダーシップ」、「組織学習」の観点からまずはアクションを起こしていきましょう。