【コスト削減】「規模の経済性」、「範囲の経済性」「密度の経済性」を理解し、戦略につなげる

事業経済性とは

一言でいうと、事業経済性とは事業を拡大することでコスト削減ができる要素の総称です。
事業経済性には「密度の経済性」が含まれ、それ以外では「規模の経済性」、「範囲の経済性」などがあります。
例えば、競合関係にある2社が500円の製品を販売し、同じ数量を売り上げた場合、一見儲けは同じに見えますが、もしこの製品を製造するのに
A社は、「100円のコスト」、
B社は、「300円のコスト」、
を支払っていたらどうでしょうか。
A社の方が利益は大きいことがわかります。

このようにコストを低減することが競争優位性を築くために非常に重要となってきます。
コスト低減の仕組みを構築し、事業の経済性を高める考え方は複数ありますが、今回は代表的な考え方である「範囲の経済性」「規模の経済性」「密度の経済性」について紹介していきます。

範囲の経済性

今までいた事業部の資源や培ったスキルノウハウを活用することです。
すでに持っている資源を、ほかの事業でも活用することで、それぞれの事業を単独に行うより、コストが削減できることを「範囲の経済性」といいます。

範囲の経済=相乗効果、シナジー効果となります。

  • 経営シナジー:人材、管理、補完財
  • 生産シナジー:生産
  • 販売シナジー:販売・流通
  • 投資シナジー:技術

社内リソースに着目した活用

ビールメーカーが自社のバイオ技術は医薬品や化粧品、農作物の開発へ展開しているのは、その良い例といえます。
これは「研究開発に投資して、そこで得られた技術や成果を活用する」と言う意味で「投資シナジー」をきかせているのです。

顧客接点に着目した活用

例えば、製造から小売りまでを手がけるアパレルメーカーが新ブランドを立ち上げる際に、既存の実店舗やウェブストアメールマガジンやアプリを使って新ブランドを「訴求・販売」していくという例です。
これまで築いてきた既存顧客との接点を新ブランドの訴求にも余すところなく使う「販売シナジー」で範囲の経済性を高めているのです。
活用するのは必ずしも社内にある有形資源だけでなく、「顧客接点」や「ブランド力」のような対社外の無形資源も対象となります

規模の生産性

事業当たりの規模が大きくなることで、製品1つ当たりのコストが低減することで、スケールメリットとも呼ばれる
事業拡大や、M&Aをした時のコスト低減を見積もる、競合のコストを推測するなど、特にコストに関す戦略を立案する際には規模の生産性について考える必要があります。

固定費の分散による活用

固定費とは、家賃や設備費など製品を作っても作らなくても発生する費用です。
生産量が多ければ固定費は分散され、1単位当たりにかかる固定費は、少なくなります。
例えば製薬会社では、膨大な研究開発費が必要です。
販売量が小さければ製品1つ当たりの研究開発費が高くなってしまいます。
そのため製薬業界ではM&Aが世界中でおこり、事業規模を大きくしようと言う取り組みが行われています。

変動費、仕入れのボリュームディスカウントによる活用

変動費とは製品の生産量によって変動する費用です変動費とは製品の生産量によって変動する費用です
この中でも特に仕入れコストは製造する数の大きい会社が有利です。
たくさん購入することにより「買い手の交渉力」が増し、安い値段で仕入れることができる可能性が高くなります。
業種によって固定費と変動費のどちらに、より規模の経済性がより強く働くとは異なりますが、このように生産量が増える事で固定費と変動費の双方を抑えることができます

規模の経済性と範囲の経済性の違い

「規模の経済性」のコスト削減の要因は、固定費の分散と変動費を構成する仕入れのボリュームディスカウントによるコスト削減です。
1つの工場で同じ商品の生産量が増えれば、製品1単位当たりのコストが抑えられます。維持費用が変わらない工場では、材料を大量に仕入れれば、安くなります。
一方「範囲の経済性」は経営資源やノウハウを異なる複数の事業間で共有することでコスト低減効果を発揮していきます。共有する事業数が多いほど一事業当たりで発生するコストが抑えられます。

密度の経済性

1つの地域に店舗や物流センターを集中配置することで物流や広告などのコストが削減できることを指します。
ある市場があり離れたエリアに店舗を構えるとします。
するとそれぞれの場所で広告や物流センターが必要になってきます。
一方で同じ市場でも近くのエリアに店舗を構えるとします。すると近くのエリアに同じ店舗があること自体な宣伝効果となります。また店舗間の距離が近い事は商品の運送においてもメリットとなり、物流コストも削減できます。
このような密度の経済性は、特に地域ごとに物流や宣伝が必要になる「小売」や「運送」などのサービス業で活用することができます。また1点の地域に集中して店舗を構え、密度の経済性で地域1番となる事で、他社より優位に立つ事を、ドミナント方式と言われることもあります。

密度の経済性の事例:セブンイレブン

日本一のコンビニエンスストアチェーンであるセブンイレブンは国内に2万店舗あります。しかし全都道府県への進出は競合より遅くなっており、四国には2013年に初めて出店し、その後、2年でおよそ200店舗の出店していたり、沖縄県には2019年に進出しております。
セブンイレブンは1つの地域に限定して出店することで、「仕入れにおける物流コストの低減」、「店舗を訪問する」、「スーパーバイザーの時間効率の向上」、「近くの店舗同士の競争意識によるモチベーション向上」、「顧客
にとってのアクセス性の向上」などを可能にしています。
つまり密度の経済性効果を狙い一定の地域に集中させるドミナント方式で地域で1番出店数が多い状態を作り、コストや効率面で優位に立つことを目指している、といえます。
注目すべきはセブンイレブンはフランチャイズ方式でありながら立地を自社で選択できていると言う点です。一般的にフランチャイズ方式は店舗経営者すなわちフランチャイジーが望む立地に作られます。一方でドミナント方式のためには企業側がある程度立地をコントロールする必要があります。利益が最大化できる立地にフランチャイズで店を出せると言う事は、ブランドや経営などの観点で顧客のみならず、フランチャイジーである店舗経営者側にも魅力的であると言うことです。

不経済に陥る場合もある

範囲の不経済

範囲の経済性は、製品の種類や事業の多角化が進めば常に高まるわけではありません。
ある金融機関では営業担当者がこれまでと異なる種類の金融商品を販売することで手数料収入を増やそうとしました。
しかし、実際には営業担当者の商品知識の勉強が追いつかずに範囲の経済性は得られなかったそうです。こういった事象のことを「範囲の不経済」と呼びます。
効率的な営業や開発ができなくなり、かえって非効率になる事は陥りがちな罠といえます。

規模の不経済

規模の生産性はずっと高まり続けるとは限りません。
こちらも「規模の不経済」が生じることもあります。
規模化によるコスト低減以上にコミュニケーションや調整の手間暇が増してしまい、かえって単位当たりのコストが増すことです。
全社で共有できる固定費が少なく距離的にも離れた場所で展開するサービス業で起こりやすい現象です。

密度の不経済

密度の経済性を意識しすぎた結果として店舗同士で売り上げを取り合う共食い、いわゆる「カニバリゼーション」に注意が必要です。

近い立地だからといって闇雲に出店しては、自社の店舗同士な顧客を取り合うだけで、かえってコストがかさみます。各店舗が売り上げを十分にあげられ、しかもコストを抑えられる、つまり利益の最大化ができる立地やサービスを選びましょう。

tips

範囲の経済性におけるTips

「新しく展開するビジネス」「既存の資源の共通部分」が本当に競争優位性の一員となり得るのかを十分に検討する必要があります。
高所得世帯の主婦をターゲットとした健康食品の訪問販売会社があったとします。
営業担当者が販売シナジーを生かして、新たに服飾や宝飾品を販売しようとしましたが、あまりの商材の違いにうまくいかないのです。新規事業は本来難しいものです。
シナジーが効くポジティブな要素に着目しがちですが、事業を増やすことのデメリットについてもよく考える必要があります。範囲の経済性を発揮させようとしても安易な多角化は要注意と言えるのです。

規模の経済性におけるTips

規模の経済性の影響と稼働率の上昇の影響を考慮

稼働率の上昇でも固定費は分散するので1単位あたりの固定費は低減します。
1日に2個しか製造していなかった工事が、稼働率を上げ1日4個製造するようになったら1単位あたりの固定費は低減します。
コスト比較をする際には「規模の経済性の影響」と、「稼働率の上昇の影響」、どちらなのか注意しましょう。

共有できる範囲を見極める

同じ固定費でも広告費や研究開発費など、全社や事業部全体で共有できる固定費は分散できるため、規模の経済性が比較的大きく働きます。
一方個別の店舗など狭い範囲に固有の固定費では規模の経済性が効きにくく、この場合はむしろ稼働率を高めることが重要になります。
固定費に分類できる費用だからといって、安易に一まとめにせず、どの範囲まで共有でき規模の経済性の効果が働くのか、しっかり見極める必要があるのです。
儲けにつながるコスト低減の仕組みの代表的な1つである規模の経済性。どんな時にどこに効くのかを理解し競争優位を築くために役立てましょう。

密度の経済性におけるTips

戦略を考えるにあたって、まずは「vison」ありきで、その次に事業経済性を効かせられるかを考えることが重要です。
事業経済性が効くかどうかにとらわれると本来やりたかったことができない可能性があります。まずはどこのどんな顧客にどんな価値を提供したいか、というビジョンがあるべきです。ビジョンに基づく戦略を考える際の一要素として密度の経済性を含め事業経済性が活用できるかを考えるが良いでしょう

まとめ

範囲の経済性:
自社資源の他事業展開によるコストの削減です。
「ヒト、モノ、カネ、情報」などの経営資源やノウハウを異なる事業で共有することで1事業当たりのコストが低減できます。複数業界で事業多角化した企業において、範囲の経済性が効きやすくなっています。

規模の経済性:
製品の大量生産によるコストの削減です。
工場の稼働率が上がる大量購入により原価が下がるなどで製品、1単位当たりのコストが下がります。主に製造業で規模の経済性が効きやすいとされています。

密度の経済性:
店舗等のある地域への高密度展開によるコスト削減です。
1つのエリアに複数店舗を集中させ売り上げに対する物流費や広告費が抑えられます。主にサービス業で密度の経済性が聞きやすくなっています。事業経済性によってコストを下げれば競合に対し優位に立つことができます。