【KPIマネジメント】効果的・戦略的なKPIマネジメント

KPI(Key Performance Indicator)、すなわち「重要業績評価指標」は、今ではビジネスシーンで当たり前に聞くようになりました。会社や部門が目標とする数値を個人の行動レベルにまで落とし込めるため、誰でも簡単に「何を、いつまでに、どれくらいしたらよいか」が分かります。
一方で、このKPIはあるものの、成果がなかなか上がらない企業も存在します。

KPIにより成果が上がらない理由

①KPIが「自分の行動で完結しない」指標になっている

例えば「受注件数」というKPIを設定している企業が見受けられますが、これは多くの場合間違っています。注文するか否かはお客様の判断も入るので、自分の行動だけで決定できません。仮に訪問回数が受注に繋がる可能性が高い場合は、「訪問回数」をKPIに設定すべきです。

②KPIが戦略や戦略目標とずれているケース

例えば、自動車や家具の様な高単価専門商品の接客販売でKPIを「接客人数」などに設定するのは戦略上間違っています。
これらの専門品は、いかに店側が購入者にしっかりと商品の説明を行い、購入に納得していただくかが重要です。よって、この場合は「接客時間」をKPIとした方が良いかもしれません。

このように、KPIマネジメントは現場にとっても分かりやすく、会社にとっても業績に直結する手法ですが、その扱い方が非常に難しいのも事実です。今回はどのようにKPIを設計すればよいかを解説していきます。

ビジネスの勝ちパターンを考える

KPIを設計する際に重要なのが自社の戦略です。前章で説明した通り、KPIが機能しない多くの組織は戦略とKPIが繋がっておらず、KPIは達成したのに業績が上がらない、という事態が起きています。
そこでまずは、戦略の基本的な考え方から解説していきます。

会社は利益を出さないといけません。利益は売上から費用を差し引いた物です。日本の実業家で京セラの創業者である稲盛和夫さんも「売り上げは極大に、経費は極小に」と述べている通り、企業経営はこの原理原則から外れることはできません。そのため、戦略を考える際も、「売上サイドの勝ちパターン」「コストサイドの勝ちパターン」に分けて考えることをお勧めします。

売上サイドのパターンを考える

まず売上サイドの勝ちパターンとは、すなわち顧客ニーズの満たし方です。顧客ニーズを決定する際に使えるフレームワークや思考方法は、「プロダクトライフサイクル」と「製品分類」が挙げられます。

「プロダクトライフサイクル」は、製品群の置かれているフェーズによって顧客タイプや競合状況が異なるため、マーケティング課題が変わってくることを分析するフレームワークです。
例えば導入期では顧客洞察と市場投入のためのリソース獲得が重要な勝ちパターンとなりますし、成長期では市場シェアの獲得、差別化、広告宣伝の強化が重要な勝ちパターンとなります。
このように、プロダクトライフサイクルに応じて顧客ニーズが何か、そのために何に注力すべきかを分析できます。

「製品分類」は物理的特性、使用目的、購買プロセス、生産プロセスに応じて製品が分類され、その分類によって顧客の求めるものが変わってくるというものです。見慣れていない方もいると思いますので、下記図をご参照ください。

菓子製造業界で考えるとプロダクトライフサイクルは成熟期、製品分類は最寄品です。超低価格の実現と周辺機能ニーズの充実(例えば通販や返品対応等)、そしてすぐ手に入ることが売上サイドの勝ちパターンであると言えます

コストサイドの勝ちパターンを考える

コストサイドの勝ちパターンを考える際は、コスト構造分析による事業経済性の考察をお勧めします。コスト構造分析は事業のコスト構造上、どのコスト比率が他の業界と比較して高いかを分析することです。例えば製造業のような設備の減価償却費が高い業界は規模の経済性が重要ですし、コンビニのような物流費が高い業界は密度の経済性が重要です。自社の所属する業界がどのようなコスト構造になっているかを分析してみてください。

菓子製造業界では、減価償却費と材料費が高いため、規模の経済とスケールメリットを効かせることが重要、すなわち市場シェアが勝ちパターンになります。

このように、「売上サイド」と「コストサイド」の勝ちパターンをそれぞれ考え統合すると、市場シェアを高め、顧客がいつでもすぐに低価格で購入できる事業体制を構築することが勝ちパターンであると言えます。
また菓子は賞味期限があるため、在庫リスクが極めて高いと言えます。この点を見ても、市場シェアを高め、作ってすぐに売れていく程のシェアを持っておくことが重要であると言えます。

KPIを設定

続いて売上サイドの勝ちパターンとコストサイドの勝ちパターンからKPIを設定します。多くの場合、前章のように売上サイドとコストサイドの勝ちパターンを統合する段階でKPIを何にすべきかが見えてきます。

冒頭に説明した通り、KPIは自己完結する目標であることが大切です。菓子製造業の場合は市場シェアを高めることが重要で、その結果規模の経済性が効き、在庫リスクが最小化されると分かりました。すなわちこの業界で好循環に入るトリガーは「棚に置かれる状態をまず作る」ことです。このようにKPIを考える際は、勝ちパターンを実現するためのトリガーを見つけるようにしてみましょう。

例えば独自性のある商品に強みを持つ会社であれば、開発力で棚に置かれる状態を作れます。この時、顧客アンケート回数試作回数がKPIになるでしょう。一方で営業の親身なサポートに強みを持つ会社であれば営業力で棚に置かれる状態を作れます。この時は、顧客訪問回数提案企画数がKPIかもしれません。このKPI目指して誠心誠意実行すれば「棚に置かれる確率が最大化するか」ということをしっかりと考えることが重要です。

このように勝ちパターンを考えるプロセスを経ることで、自社の強みと突き合わせてKPIの設定を行うことができます。

まとめ

戦略(勝ちパターン)への深い理解がKPI設定の第一歩です。まずは自社がどのような業界で、どのような戦い方をしなければならないのか、ということを論理的に考えてみてはいかがでしょうか。