5F分析とは、詳細は【5F分析】の記事内で紹介しておりますが、簡単に説明すると、1979年にマイケル・ポーター教授によって発表され、自社の事業の競争環境を分析していくフレームワークになります。

5F分析の限界

しかしながら5F分析は万能ではありません。その限界を知っておくことも大切です。5F分析はSCP理論がもとになっています。すなわちこの理論が成立する前提条件の中でしか有効に機能しないということです。ここでは大きく二つ、ご紹介します。

①産業構造だけで収益性が決まらなくなってきた、ということ

カリフォルニア大学のリチャード・P・ルメルトの研究によると、企業利益のばらつきは産業効果が二割、企業固有の効果が八割ということが分かりました。すなわち、どの産業にいるかより、どのような戦い方をしているかの方が企業利益を決定する、ということです。

②代替品の脅威が想定しにくくなったこと

業界の収益性が急速に低下する多くの原因は代替品によるものです。
しかし、技術革新が速くなり、消費者変容も加速し、さらに世界中が競争相手になった現代において、この代替品を予測するのが困難になってきました。ほかの力が比較的弱い業界であっても、強力な高パフォーマンスな代替品によって、そもそも業界自体が吹き飛ぶ可能性が高まっています。

DX時代に5F分析は有効か

まずDXは下記のように定義できます。

  1. データとデジタル技術を活用して
  2. 組織文化・製品/サービス・ビジネスモデルを変革することで、
  3. ネットとリアル両面での顧客体験価値を創出し、
  4. 競争優位性を構築すること

そしてDXを推進した企業の理想的な姿は次の通りです。

  1. ネットとリアルの両面で顧客価値を最大化する製品/サービスを提供する
  2. 顧客価値の提供の際に顧客接点を持ち、データを収集/蓄積する
  3. 収集及び蓄積されたデータを自社で活用できる形式に高速で処理する
  4. 製品/サービス開発と社内システムへデータをフィードバックし、改善する

ここから分かる通りDX時代の競争戦略は、データ・デジタルドリブンで高速かつ効率的にプロセスを回して改善し続けることで、競合より上手く顧客へ体験価値を提供することが求められることを意味しています。
何故これが重要なのか、それは市場が不安定になり予見ができなくなったため、「CDAサイクル」や「OODAサイクル」を回すことが最も生産性が高くなるからです(VUCAワールド)

ここまで説明すると分かる通り、DX時代に5F分析は実務上ほぼ機能しないと考えられます。
代替品は予見不能、買い手のニーズは細分化され、かつ体験価値の重要性が増すことで業界では定義できない数のプレイヤーと競合することになります。
データやデジタル技術の普及で企業ごとに全くことなるビジネスプロセスを取れるようになってきているため、収益性も業界ではなく企業固有の要素が影響する比率が更に高まるでしょう。

DX時代に重要なことは何か

このように、DX時代ではSCP理論に基づいた5F分析を中心としたポーターのフレームワークが機能しにくくなることを説明してきました。要するに共通の競争環境の基、事前に計画して戦略を立てることは難しいということです。

このようなDX時代に重要なことは、

  1. ビジョンを持つこと
  2. とにかく試すこと
  3. 測定した結果を高速で解釈し次につなげること

VUCA時代には正解はありません。
自分たちがやりたい、解決したいと思ったことに賛同してくれた人が顧客になり、メンバーになり、組織文化になります。先が見えない旅には、明確な指針が必要なのです。
そしてとにかく歩いてみること、歩いた結果間違えていそうならばすぐに傷が大きくならないうちに修正することです。そしてDX時代は、これらを効率的に行えるデータ・デジタル技術の組み合わせが無数に存在します。

2025年の崖

DXが進まなければ、「2025年には最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と警告し、そのことを「2025年の崖」と呼ばれています。

そこでこの「2025年の崖」を乗り越えるには、3つの期間に渡って施策を実施することが必要となってきます。

第1期間:「DXの先行実施」

対象期間は2018年からとされており、後続の基幹システムの刷新までに、企業ができるものからDXを実施するというものです。

DXの過程としては、クラウドなどの技術革新で取得可能となった膨大なビッグデータを定量化し「見える化」することから始まります。

ここからさらに、分析可能になったデータを解析し、新たな価値を生み出すことで変革を起こします。
このことをDigitalization (デジタライゼーション)と呼びます。

第2期間:「システム刷新」

対象期間は2020年までとされており、この期間では、「見える化」指標による診断・仕分けを行い、さらにシステム刷新に向けた計画策定によりリスクを洗い出すことが主な内容となります。

第3期間:「システム刷新集中期間」

対象期間は2021年から2025年までとされており、この期間は、経営戦略を踏まえたシステム刷新を経営の最優先課題として、全社的にシステム刷新に取り組む期間として位置付けられています。

まとめ

ICTやIoTの活用が進み、DXを推進する企業がますます増えています。この潮流は新たなエコシステムを生む可能性もあり、ビジネスモデルの変革を進めなければ市場の変化に対応できなくなるかもしれません。技術的負債は事業拡大の足かせにもなりますから、早急なシステム再構築が重要といえるでしょう。

どう実現するかに向けて、いかに早く投資し「顧客設定のデジタル化」、「社内のデジタル化」、「新しいビジネスの創出」を実施し、2025年の崖をのりこえましょう。残された時間は5年しかありません。