新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言が、対象地域を全国として出されました。これを受け、外出やイベントの自粛、休業要請が各自治体から出され、個別企業においても在宅勤務、時差出勤といった急激な働き方の変革が求められています。

このような有事の際、特に大きな影響を受ける企業はどのような戦略、アクションを持って対応していけば良いのでしょうか。

新型コロナウイルスはどのような経営環境の変化をもたらしたか

結論から述べると、“いかに差別化し完全競争から距離を置くか”から“いかに全体でサバイブするか”へ戦略の論点が変化した業界が増えました。すなわち平時の戦略が一気に通用しなくなったのです。

緊急事態宣言を受け、在宅でできる仕事、食事、娯楽や生活の質、向上に対する金銭的・時間的投資が増加するという消費者の行動変容が起きました。

例えば米国のある地域では、外出禁止令が出た週の動画視聴時間が2.2倍増え、日本でもビール系飲料の販売量が主要各社ともに増税後初の数%増加に転じました。また、ニトリではベッドや家電を中心に、前年同月比で10%以上増収増益となっています。逆に、外食や観光業は一瞬にして市場自体が急速にシュリンクしました。

このような市場環境の変化を受け、競合との競争も劇的に変化しています。これまでは競合に対しどのようなポジショニング、差別化をするかが重要でした。
しかし市場が劇的に変化することで、業界内のプレイヤー同士で競争すること自体の意味がなくなり、どう全体で生き残るか新しいビジネスシステムを協働しながら探さなくてはならなくなりました。もちろんこれは競合だけでなく、バリューチェーン全体を通じて同様の動きが見られます。

自社においても、時差出勤、在宅勤務などの新たな働き方を取り入れたビジネスシステムの設計をしなければならなくなりました。中には休業要請対象内に入り、そもそも操業ができない事態も起きています。

このように、市場、競合、自社環境共に致命的な変化が急激に起きました。

有事においてどのような戦略を取るべきか

通常の有事の際の再生戦略マップは一般的に下記の様な流れになります。

止血(資金調達、資産圧縮)

借り入れや助成金の活用、泥臭い営業戦略、返済計画の見直し交渉、売掛金の早期回収、買掛金の遅延交渉、在庫の圧縮、不要な資産売却を通じてとにかくキャッシュフローを改善します。1日でも長く生き延びるための手元の現金を増やします。

現状、業績悪化に連動した補助金や助成金も日に日に増加しています。また金利も下がっており、民間、公庫含めて借入を最大まで行っている事業者も増えています。

事業構造変革

今現在、もしくは将来の顧客及びそのニーズに対して、現状の自社リソースから展開できるビジネスモデルを想定し組み替えます。圧縮された資産によって得られた身軽さで、事業の解体、再構成を繰り返すフェーズです。

飲食店のオンラインサービスや、メーカーの通販直送サービス、観光業やシアターでは将来使えるチケットの販売開始等、新たな事業構造を展開しています。

スケーリング・安定化

最後は決定されたビジネスモデルを拡大、安定化させ、次の事業の種を探すフェーズです。上場やM&A等が一般的に行われます。

今回の新型コロナウイルスにおける最大の難所は、止血と事業構造変革を同時に実施していかなくてはならない事業者が多く存在することです。

資金調達にはタイムラグがあります。市場が消滅し、かつ手元流動性比率が数日しかない事業者は、止血だけしていても家賃や光熱費、人件費、支払利息で資金が底をつきます。中長期的なビジネスに繋がるキャッシュエンジンを探さなくてはなりません。

ちなみに中小企業事業者の中でコストカットを叫ばれる経営者がいますが、多くの場合上手くいきません。理由は、やりやすいコストカットはもうほとんど残っていないためです。大企業でない限り、中小企業では長年の現場レベルの改善でやりつくされています。金銭的、時間的な投資を伴い、仕組みそのものを大きく変える必要がありますが、今このタイミングでどれほどそれが重要かは考えた方が良いでしょう。

大切なことは何か!?

このような状況下で重要なこと、それは圧倒的なリーダーシップです。

ここで言うリーダーには3種類、リーダーシップには4つのスタイルがあります。

リーダーの3種類

まず初めに、多数決や選挙で選ばれた“Elected Leader”、次にトップや上司から任命された”Appointed Leader”、最後にその場を何とかしたいという自然発生的な気持ちから生まれれる”Emergent Leader”です。

有事の際は、現場レベルで情報を吸い上げ、指示が出せる自然発生的なリーダーが有効に作用します。トップまで不確かな情報が伝達し、現場とコミュニケーションを取って意思決定するのでは確度も速度も低いためです。何か起きた時、真っ先に行動し周囲を巻き込む人はいませんか?
その人が”Emergent Leader”です。

リーダーシップの4スタイル

条件適合理論によると、置かれた環境要因と部下の適合要因に応じて取るべきリーダーシップのスタイルを変えた方が良いとされています。そのスタイルの種類は、「指示・命令型」「参加型」「支援型」「委任型」です。より難しい環境下で部下が能力不足であれば厳格に指示するスタイル、安定した環境で部下の成熟度も高い場合は任せるスタイル、というように使い分けます。

今回のケースでは、4つスタイルのうち指示・命令型のリーダーシップスタイルが有効と考えられます。有事の際、人は精神的に退行し、導かれることを望みます。また変革で失うものは明確ですが、得るものは不明確であることから、多くの人は保守的になります。

このことから、このレベルの有事の際は自然発生的なリーダーシップのもと、指示・命令型のリーダーシップを発揮して情報収集、即断即決、方針共有・指示を行っていくことが求められます。このようなリーダーシップに皆がリーダーの存在を強く感じ、「すべきこと」が分かることで安心します。

リーダーに求められる力

一つは「不確実な情報の中で物事を決断し、軌道修正し続ける力」、もう一つは「内部に対し明確で具体的な実行プランレベルの指示を出す力」です。これらの能力を持つリーダーは、自己効力感と覚悟、そして戦略への深い理解があります。そしてこの力に対し、フォロワーシップが発揮されます。

まとめ

新型コロナウイルスの影響で、経営環境は劇的に変化しました。それに合わせて多くの事業者は大きな事業構造の転換をしなければならないかもしれません。その際に重要となるのは、リーダーシップを強烈に発揮できるリーダーの基、再生戦略プロセス(止血→事業構造変革→安定化)を上手く機能させることです。